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私が贈るMVP
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2003.10.5
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執念というものが、通じたのでしょう。10月3日は、ヤクルトとの最終戦になりました。初回に1点をリードしながらも、5回に追いつかれ、6回に2点を勝ち越されました。しかし、7回には代打・江藤が逆転の3ラン。8回にも4点を奪い、逆転しました。打線の活躍は言うまでもありませんが、この逆転ゲキは、先発したエース・上原の執念が呼び込んだものだと思っています。
勝利にかける上原の執念は、凄まじいものがあります。「ヒザが痛い」「腰が痛い」とは聞きますが、マウンドに上がれば関係ありません。不安のある下半身は、テーピングでガチガチに固めミイラのような状態です。今季はたくさんのケガ人が出て戦列を離れましたが、いつ抜けてもおかしくない状態の上原だけは、最後までローテーションを守り、エースとしての立派な活躍をしてくれました。
私が評論家時代、ドラフトでメジャーか、巨人かで迷っていた上原と話をしました。緊張したせいか、口数は少なかったのですが、実直で純粋な男だと感じました。「この男がジャイアンツにきてくれれば、チームにとって大きな財産になる」まだ実力の程は知りませんでしたが、上原に感じた実直な純粋さは、勝負に生きる世界で必要な強い闘争本能に繋がるからです。
コーチとしてユニホームを着ることになり、上原とともに戦うことになりました。最初に感じた通りの男でした。松井と本塁打争いをしていたペタジーニに敬遠のサインが出た時、マウンドで悔し涙を流しました。よくない慣習ですが、日本球界では自軍の選手とタイトルを争う他球団の選手に対し、勝負を避ける事が当たり前のようになっています。そんな中、上原の流した涙は、日本球界の慣習に強い疑問を投げかけました。
「逃げたくない」「勝負したい」という純粋な気持ちです。上原の勝負にかける純粋な気持ちが、私だけでなく、多くのファンに対して訴えかけたのです。普通でいれば気が付かない「常識」を上原の涙が「なにか違うんじゃないか」と疑問を投げかけてきたのです。いいか、悪いか、は別の論議になりますが、常識をも覆す純粋さを上原は持っているのです。その純粋さが勝負に対する「根性」や「執念」になり、エースとしての上原を支えているのでしょう。
監督としてわずか2年間ですが、私を一番、助けてくれた選手を挙げろというのであれば、迷わず上原を指名します。コーチとしての3年間を含めても、上原になるでしょう。チームを去る私の気持ちの中の「MVP選手」です。
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